エコキュートの仕組みとは?自然冷媒は二酸化炭素(CO₂)

エコキュートというのは愛称で、正式名は「自然冷媒ヒートポンプ給湯機」です。この名前を聞いても、自然冷媒という言葉やヒートポンプという言葉が一般的にはあまり馴染みがないので、どのような仕組みなのかイメージしにくいかもしれません。はたして自然冷媒とはいったい何なのでしょうか?

エコキュートの仕組みは電気給湯器

まずエコキュートを分類すると、ガスはまったく使用せず、電気を用いてお湯を沸かすので「電気給湯器」という枠組みになります。似たような名前でエコジョーズという給湯器がありますが、こちらはガスを使用していますのでガス給湯器です。どちらもエコなのですが、仕組みはまったく異なります。

オール電化住宅にマッチしているのが電気給湯器です。ただし最近は電気代が急騰しており、コスト面を考慮して電気給湯器をガス給湯器に交換する家庭も見られるようになりました。しかし、同じ電気給湯器でも、エコキュートの消費する電力は従来の電気給湯器の1/3です。ここまで消費電力に大きな違いが生れるのは、一般的な電気給湯器は電気のエネルギーで水を温めるのに対して、エコキュートは「熱を移動させるためだけに電気を使用する」という点になります。そしてこの熱を運ぶ役割をするのが自然冷媒なのです。

エコキュートの仕組みにある「冷媒」の種類と効果

冷媒とは、熱を高いところから低いところへ運ぶ流体の総称です。冷媒を利用して熱を運んでいるのは、エコキュートだけでなく、エアコンや冷蔵庫も同じ仕組みになっています。この冷媒には種類があり、これまでは人工的に作られたフロン系冷媒(CFC、HCFC、HFC)が主流でした。しかしフロン系冷媒はオゾン層にダメージを与えるという悪影響があり、現代では急速にノンフロン化が進んでいます。エコキュートでは「二酸化炭素(CO₂)」を自然冷媒として利用していますので、地球温暖化係数を1/1700まで抑えることができます。また、この自然冷媒の二酸化炭素は工場の副産物で、リサイクル利用されているものです。

エコキュートの仕組み

自然冷媒にはプロパンやアンモニアなどの可燃性や有毒性が含まれるものもありますが、その中で二酸化炭素を自然冷媒として利用しているものだけをエコキュートと呼んでいます。ですからエコキュートを利用することで、地球温暖化を軽減する効果だけでなく、火事やガス中毒といったリスクをゼロにすることも期待できるのです。「何を冷媒に使っているのか」という点は今後さらに注目されるポイントになってくるでしょう。

ちなみに国からの補助の対象となるZEH(ネットゼロエネルギーハウス)仕様の住宅は、2020年省エネルギー基準や住宅トップランナー制度よりも基準が厳しいのですが、実にZEH仕様住宅のうちおよそ6割がこのエコキュートを採用しています。経済産業省国土交通省環境省は連携して、2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現することを目指していますから、まさに国に推奨されている給湯機がエコキュートということです。

エコキュート製品のひとつ「ヒートポンプ給湯機」の仕組み

それではここからは自然冷媒を利用した「ヒートポンプ給湯機」の仕組みについてご紹介していきます。ヒートポンプ給湯機でどのように二酸化炭素をリサイクルしてお湯を沸かしているのかがわかれば、どれだけ消費電力を軽減できるのかという点も納得できるはずです。なお、ヒートポンプとは、ヒート(熱)を集め、ポンプ(汲み上げて)で熱を移動させる仕組みのことを指しています。

ヒートポンプ給湯機は2種類のユニットに分かれる

エコキュートは2種類のユニットに分かれています。ひとつはエアコンの室外機に似たようなもので、ファンを回して空気を集めます。これが「ヒートポンプユニット」です。ここに空気熱交換器があり、大気中の熱を電気エネルギーによって汲み上げ、自然冷媒に熱を伝えます。ゼロから熱を生み出すわけではないので、通常の電気給湯器よりも効率よくお湯を沸かすことが可能です。ちなみに外気の温度が高いほど、それを汲み上げるので効率は向上します。外部気温がマイナス10℃であっても高温での貯湯は可能な作り(一般地用)になっていますが、長野県のように外部気温がマイナス10℃を超える地域では、寒冷地仕様のエコキュートを選択していただきます。

エコキュートはこのヒートポンプユニットの他に、お湯を貯めておく「貯湯ユニット」があり、通常だと高さ2m・幅60cm・奥行き70cmのかなり大きなタンクになります。薄型だと高さ2m・幅1m・奥行き40cmほどです。ですからエコキュートを設置する際には、「ヒートポンプユニット」と「貯湯ユニット」の2種類のユニットを置く場所を確保する必要があります。

ヒートポンプ給湯機の給湯サイクル

空気熱交換器で自然冷媒に熱が伝わると、今度は圧縮機(コンプレッサー)で自然冷媒を圧縮し、さらに高温化させます。そしてその熱を利用し、水熱交換器という場所で入水した水に熱を伝えてお湯を沸かすのです。65℃~90℃のお湯を作り出すことが可能です。これをヒートポンプユニットから出湯して、貯湯ユニットに送ります。

貯湯ユニットのタンクは二層に分かれており、上部が送られてきたお湯を貯める部分になっています。ここからお風呂やキッチンに給湯するわけです。また使用したお湯の分だけ給水されるので、タンクは常に満水状態です。このタンクに給水された水は下部に貯まり、ここから逆にヒートポンプユニットへと送られます。上部に貯まったお湯と、下部に給水された水が混じり合うことはありません。

水熱交換器で熱を伝えた自然冷媒は高温状態ではなくなっていますが、膨張弁によって、減圧されてさらに低温化します。そしてこの自然冷媒がまた空気熱交換器に送られて、汲み上げた大気の熱によって温度を高めることになるのです。つまり自然冷媒の二酸化炭素はヒートポンプユニット内だけで循環し、空気熱交換器から水熱交換器までは熱を水に伝えるために高温化していき、水熱交換器から空気熱交換器までは熱を受け取るために低温化していくという働きをしています。この間、電気は大気を取り込む際や自然冷媒を運ぶことなどにしか使用されないので、必要最低限の小さな電気消費量で済ますことができるのです。

まとめ(エコキュートの仕組みを理解して分かること)

ご紹介してきたように、同じ電気給湯器とエコキュートでは仕組みがかなり異なります。効率よくお湯を沸かすことができるので、電気代は1/3に節約できますから、これまでの電気給湯器が故障したり、買い換え時を迎えたりした場合でも、コスト面からガス給湯器に買い換えるのではなく、エコキュートに交換してみるのがおすすめです。しかも自然冷媒は二酸化炭素(CO₂)ですから、地球環境にも優しく、まさにこれからの時代に最適です。ここ長野県でもエコキュートは今後どんどん普及していくでしょう。

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