どこのメーカーでも一般仕様とは別に寒冷地仕様のエコキュートを開発・販売しています。価格は一般仕様よりも4万円ほど高いというのが目安です。寒冷地仕様は一般仕様にはない寒さ対策の機能を搭載しているので、価格がやや高くなるのです。
エコキュートはヒートポンプユニットで大気の熱を集めてお湯を沸かす仕組みになっていますので、外気が高いと効率良くお湯を沸かすことができますが、逆に外気が低いと熱を作り出す効率が悪くなっていきます。寒冷地仕様のエコキュートにはこのような状態でも効率向上できる機能が搭載してあります。
また循環している水が凍結してしまうことを避けるためにヒートポンプユニット配管や風呂配管は凍結防止対策がとられていますし、機内配管が凍結しないように凍結防止ヒーターが作動しています。ただし、メーカーによって対策も少し異なっており、ダイキンの製品を例に取ると、外気が3℃以下になると循環ポンプが作動して凍結を防止し、外気が0℃以下になると予熱制御を行い圧縮機の不良を防止します。ここに凍結防止ヒーターを加え、配管に断熱材を加えることで寒冷地仕様だとマイナス20℃の中でもエコキュートでお湯を沸かすことができるのです。
冬になるとお湯を使用する量も増えますので、ランニングコストはどうしても夏よりも高くなってしまいますが、それでも他の給湯器より優れたパフォーマンスを発揮しています。パナソニックの公式発表によると、北海道における寒冷地仕様のエコキュートのランニングコストを1とすると、石油給湯器は2、電気給湯器は3、ガス給湯器は4となっていますので、従来の電気給湯器の1/3のコストに抑えることができるのです。寒い地域は冬の季節ではどの給湯器を使用しても格段にランニングコストが上がりますので、寒冷地仕様のエコキュートを導入すれば、節約できる金額はかなり大きなものになります。
エコキュートがどこまでの寒さに対応できるのかの目安は、一般仕様でマイナス10℃まで。寒冷地仕様でマイナス20℃までです。マイナス20℃を下回る場合は屋外設置不可となっています。
北海道の中でも寒いことで有名な旭川市には、ダイキン旭川ラボがあり、寒冷地仕様の実験や性能の検証をしており、ダイキンの耐寒性能は他のメーカーよりも高いレベルにありますが、それでもマイナス25℃が限界です。ダイキンの製品であれば外気がマイナス25℃でも85℃のお湯を沸かすことが可能です。ただし、ヒートポンプユニットと貯湯ユニットでは耐寒性能が異なり、ヒートポンプユニットはマイナス25℃まで対応できますが、貯湯ユニットはマイナス20℃が限界となっています。ですから、マイナス20℃を下回る地域の場合は、貯湯ユニットを屋内に設置する必要があります。ちなみに屋内にエコキュートの各ユニットを設置する場合は、2万円ほど高くなるのが目安です。
それでは具体的にどのような地域ではエコキュートの寒冷地仕様を選ぶのがいいのでしょうか。北海道はもちろん寒冷地仕様になりますが、本州でも該当する地域があります。また、寒冷地仕様のエコキュートを設置する場合、積雪対策も重要になってきます。
寒冷地仕様を購入すべき地域は、令和2年に国土交通省が定めた「建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令における基準方法等を定める件」でⅠ地域、Ⅱ地域に該当するところです。Ⅰ地域は北海道の士別市や夕張市など一部、Ⅱ地域は北海道の札幌市や旭川市の他に、青森県の平川市、岩手県の八幡平市、秋田県の小坂町、福島県の南会津町ほか、栃木県の日光市、群馬県の嬬恋村ほか、長野県の塩尻市や軽井沢町、木曾町などです。このような寒冷地区分に該当する地域では、一般仕様ではなく、寒冷地仕様のエコキュートを利用すべきです。長野県は広いので上田市や佐久市のようにⅢ地域の場所や、長野市や松本市のようにⅣ地域に区分されている場所もありますので一概には言えませんが、寒冷地仕様のエコキュートの方が適していると考えた方がいいでしょう。
重要なポイントは冬にマイナス10℃を下回るのかどうかという点になりますので、下回る年もあれば下回らない年もあるような微妙な状態であれば、不安なく生活できるように寒冷地仕様を購入しておくことをお勧めします。また、マイナス20℃を下回る場合は、屋内にエコキュートを設置することで対応できますが、その際に注意しなければならない点としては、エコキュートには40dBという「時計よりやや大きい音」の低周波騒音の問題がありますので、できるだけ寝室から離れた場所に設置した方がいいでしょう。
マイナス20℃を下回らなければ寒冷地仕様にしておけばそれで安心というわけにもいきません。特に雪が多く降る地域では、寒冷地仕様を購入して設置するというだけでは対応不足になります。ヒートポンプユニットは冷却した空気の排出口に霜が付きやすく、除霜機能で対応しているのですが、大雪によって埋もれてしまうとお湯を沸かす効率が一気に低下してしまいます。そのためヒートポンプユニットを積雪から30cmは離すようにしてください。毎日排雪すれば対応できる地域もあれば、1日に1m以上の積雪を記録するような地域もあります。雪の多い地域では、一般的には「高置台」を設置して、ヒートポンプユニットが雪に埋まってしまわないようになるべく高い場所に置きます。
また屋根の下は雪庇が落ちてきたり、氷柱が落ちてきたりしてその衝撃で故障してしまう恐れもありますから、防雪フードを設置してヒートポンプユニットを守るという工夫の仕方もあります。風雪対策としては、建物の東側か南側にヒートポンプユニットや貯湯タンクを設置するのが有効です。大雪の中で故障してしまうと、修理するまでに時間がかかり、それまでお湯の利用が制限されてしまいますので、冬の状況を考慮して寒冷地仕様のエコキュートの設置場所や設置方法を決めることが大切です。
寒冷地の場合は特に燃料費の負担が大きいので、ランニングコストを大幅に軽減できるエコキュートはとても頼りになります。寒冷地には寒冷地仕様のエコキュートを導入しましょう。寒冷地仕様はやや初期費用が高くなりますが、トータルコストで計算すると数年ですぐにペイできます。ただし、積雪対策を忘れると故障してしまったり、修理費用で余計な出費になってしまいますので、気温だけではなく、降雪量や設置場所も確認して、問題なくエコキュートを利用できる環境を整備してください。そうすれば寒冷地こそエコキュートを選んだメリットが大きくなります。
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